世界のアッチから

馴染みのないところから色々見てみよう、というブログ。かっこよく言うとfrom the other side。

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インド#リシケシュ "かわいいクズ"

ガンガーから見たリシケシュ

賑わうリシケシュ

リシケシュに来て、1ヶ月。

ここはヨガの総本山で、
俺もアシュラム(道場)に入って、毎日朝夕90分ずつのレッスンを受けてきた。
体を柔らかくしたい、というだけの理由で来たんだけど、
始めてみたらことのほかヨガが面白く、予想外に長居しちゃってた。

一箇所に長く留まれば、顔見知りが増えるのは当然のこと。
チャイ屋のアンチャン、カフェの看板息子、ヨガの先生、
アシュラムの掃除夫、バザールの雑貨屋、サドゥ、プッシャー…。

外国人に声をかけるようなサドゥやプッシャーは大半がクズで、
そういう連中とは俺はあんまり親しくすることはない。

そんな俺がちょっと仲良くしてたクズが一人、いた。

いい笑顔のモハン

27歳のサドゥ、モハン。
いや、プッシャーのモハン、と呼ぶべきか。
つまり、修行者として全国を巡礼してんだけど、外国人にガンジャとか売って金も稼ぐ。
まあ、インドにはよくいるタイプのクズ。

陰気で不潔な同類が多い中で、このモハン、実に陽気でカラッとした若者。

「ハーイ、マイフレンド!ゲンキデスカ?」
カタコトの日本語で明るく声をかけてきて、よく笑う。

整った顔立ちの上にオシャレで、巡礼者としてサフラン色で統一された服装は、
いつも清潔でコーディネートにもかなり気を使ってる。

バザールを颯爽と歩き回って客を探す姿は、なかなか決まってる。

そんな明るい雰囲気を俺は気に入って、一度チョコを買ったのをきっかけに、
このモハンという男とよく話すようになった。

しかし、付き合ってみると、こいつの口から出てくるのはカネの話ばかり。
「怪我して薬が必要だ。買ってくれ」とか、ただ単に「20ルピーくれ」とか。

モハン、誰にでもこのチョーシで声をかけるので、まともなサドゥ達からは白い目で見られてる。
「アイツに関わるとロクなことないよ」
わざわざ忠告してくれる人までいるんだから、よほど疎まれてるんだと思う。

でも、モハンはそんなに悪いヤツじゃない、って俺は知ってる。

チカン大国インドにあって、彼は無闇に女子を口説いたりセクハラしたりしない。
守銭奴だけど、他人の持ち物に手を出すことは絶対にないし、タカリが失敗してもあんまり根に持たない。

そして、優しい。

あるとき、自分のテントに帰ったモハン、
きれいに整えた寝床が野犬の仔たちに占領されてるのを見つけて、
「バウワウワウワウワウ!!」
大声出してマンガみたいに両手を振りかざして追っ払った。
たいていのインド人はこんなとき、蹴って殴って徹底的に追い立てるもの。
これを目撃した俺と、一緒にいたマドカさんは、すっかりモハンを気に入っちゃった。

そんな愉快なモハンが、
肩を落として、この世の終わりみたいな暗い目をしていた日がある。

その日は年に一度のディワリの祭りで、町中が花と灯りで華やいでた。

ガンガーに火を捧げる老婆

ハヌマーンの祠に祈る人

よりにもよってそんな目出度い日に、モハンは全てを盗まれた。
上下オフホワイトで揃えた服も、お気に入りのサングラスも、現金(本人いわく5000ルピー)も、
大切なものを全て何者かに盗まれてしまった。

「みんなハッピーなのに、俺はなにも持ってない。助けてくれぇ」
あまりにもかわいそうで同情しそうになったけど、
「ちょっとこれ見てくれ。グッドクオリティだ。ほら、匂いだけでもチェックしてくれ」
って、商売道具だけはちゃっかりキープしてるモハンくん。

全てを失った3日後は奇しくもモハン、27回目の誕生日。
ここぞとばかりにプレゼントを要求してきた。

「バババッグ(サドゥが使う鮮やかな刺繍入りのカバン)がほしい。安いから店で選ばせてくれ」
400~600ルピーくらいなら俺とマドカさんで買ってやろうと、一緒に民芸品店に行ったけど、
さすが洒落者、選んだ品は3000ルピーもするハンドメイド。
値切っても1500ルピーまでしか落ちず、買ってやれなかった。
他の店も覘いたけど、モハンのセンスと値段の折り合いのつくものは見つからなかった。

翌日、俺たちから高額な品はもらえないと悟ったモハンは250ルピーのサンダルをおねだり。
快く買ってあげると、満足げな様子で靴屋の親父と談笑してる。
「なにか言うことがあるでしょ?」とマドカさんに促されてようやく、
「サンキュー」

しかしモハン、俺たち以外にもお得意様を何人か抱えてる。
ヨーロピアンの女性から2000ルピーもする上等な布地をもらって上機嫌。

「明日テーラーに持っていってジャケットにするんだ。400ルピーくらいかかる。
俺は金持ってないけど、友達が払ってくれるんだよ」
「へえ、よかったじゃん。でも、友達ってどんな人?」と俺。
「たくさんいるよ。例えば君とか、君とか」

わかった!
コイツのいつも言う”友達”ってのは”あなた”って意味なんだ。
そうやって周囲の人間に甘えて、タカッて、長年放浪の旅を続けてきたクズなんだ。

なんだかもう、あまりにもアッケラカンとしたクズっぷりが爽快で、ただただ笑えた。
こんなキュートなヤツには怒る気も起きない。
もちろんテーラー代なんか出してあげなかったけど。

モハンのタカリ体質にすっかり慣れてた俺も、一回だけ驚かされたことがある。
「いいガンジャがあったら買うけど、持ってる?」
と俺のほうから商談を持ちかけたら、
「最高のモノを仕入れてくるよ。でも、今カネがないから100ルピーちょうだい」
だって!

しかし、なんだかんだ仲良さそうにしてても、俺たちは”友達”じゃない。

モハンは俺を金ヅルの一人としか見てないし、
俺は俺で、わずかな金品で面白い言動を引き出そうとしてる。
お互い下心マンマンで、同じ程度のクズってこと。

黙ってりゃ男前
黙ってたら男前なんだけどねぇ。
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テーマ:海外旅行 - ジャンル:旅行

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